LZH1908211。

地球から8.7光年離れた、りゅうこつ座の二連星、イプシロン223の第5惑星。


ここを俺たちは惑星ダンテと呼んでいる。 


大気圧450hpa、平均気温、摂氏5.7℃。
大気組成、二酸化炭素と窒素。
酸素はないに等しい。
第2種地表服無しでは生きられない、人類には過酷な環境だ。



俺はバイザー越しに巨大なマイクロ波アンテナを仰ぐ。







――あれは3ヵ月前の事だ。


太陽系方面から強いガンマ線バーストが観測された。
あり得ない事だが、G型主系列星の太陽が突然重力崩壊を起こし、地球と共に宇宙の塵と化したのだ。



地球に向けていたマイクロ波アンテナが最後に拾ったのは、全人類に向けた祈りの言葉。
後は黒体輻射のノイズのみだった。



俺たちは孤立したが絶望する者は誰もいない。
ダンテの基地の建設は衛星軌道上の母船を解体しながら行なわれた。
つまり、二度と地球には戻らないプロジェクトであり、地球を発った126年前に、すでに家族と故郷に別れを告げていたのである。

ダンテは地質学的に若く、不毛の惑星だ。
陸上にはまだ生命が進出していない。
巨大な岩盤が折り重なる赤い大地が、訓練を受けたオーストラリアの砂漠とクロスオーバーする。






アンテナ
俺はもう一度夕日に映えるアンテナを見上げる。 地球からの声が聞こえる事はもうないだろう。 これもじき解体される。 「ハリー、始めよう」 インカムからフレッドの声が聞こえる。 俺は仲間の待つローバーに向かって歩き出した。
END

科学的知識にのっとった緻密な設定、クールな描写。永遠に戻る場所がない男の感情が静かであればある程、望郷の念が静かに伝わってきました。
少ない文字数でありながら余韻の残る素敵なSS・・・。LEO様、どうもありがとうございました。

[2010年 5月30日]