「ルカ……入れ、ないで」
「下の口と違って、上の口は嘘吐きだねぇ、ジャンセンセイ? こっちの口で言ってること、ちゃんと上の口で言ってみな?」
薄暗い室内で、二人の若い男が息を弾ませながら絡み合っていた。
「センセイ」と呼ばれた薄い金の髪をした男、ジャン・トマス・ヴェルレーは全裸にされ、もうひとりの柄の悪そうなプラチナブロンドの髪の男、ルカに組み伏せられていた。その青年の指は、うつ伏せにされた「センセイ」の後孔にうずめられ、粘性の湿った音を立てながらうごめいていた。ジャンの身体はその指の動きに不定期に反応し、時折びくりとその白い肌を震わせた。両手は救いを求めるようにしっかりとシーツを掴み、甘い苦痛に身を焦がされ歪められた表情は、誰もが欲情をかき立てられるような艶をたたえていた。
「ア……、ルカ、お願いです。これ以上は……」
「何度言わせるんだよ。賭に勝ったのはオレだぜ。今夜一晩、アンタはオレの言うことを何でも聞く。そうだろ?」
「ッ……アッ……ハァ……」
「言えよ、ジャン。「そのペニスで私の奥までがんがん突いて下さい」ってさ。こんなに締め付けてきちゃって、指じゃ物足りないんだろ。ハ……やらしい身体してるな。男をくわえ込む為の身体だ」
ジャンの身体がルカの言葉に反応するかのようにまた跳ねた。ぎゅうと指を締め付けてくる入り口の感触に酔うように、ルカの口端に笑みが浮かんだ。
「ル……カ」
「言えよ。それとも「センセイ」は、約束なんて守らないってか?」
「……て……」
「あ? 聞こえねえ」
「あなたの……ペニスで……奥まで……」
搾り出すような声音で口にしたジャンのそのセリフは、まだまだルカには不満だった。「がんがん」と「突いて」が足りなかったし、何より本心からの言葉ではないことがルカには分かっていた。
ルカは目の前で裸体を晒している牧師をもっと快楽の底まで誘いたかった。欲望のままに身を任すほどにまで堕落させたかった。命令などせずとも、自分からルカを求めて止まないようになるまで。
ルカは身を伸ばして、ジャンの耳元に口を近づけ囁いた。
「60点ってとこかな。ま、アンタにしては上出来だ」
舌を伸ばし、耳の裏を舐ると、ジャンの身体がぴくりと震えた。
耳から首筋へと舌をなぞらせながらジャンの中から指を抜くと、ルカはジャンから身体を離し部屋の窓際に立った。
「――ルカ?」
不審に思い顔を上げたジャンは、ルカがそこにかかったカーテンを開くのを見た。窓の外には向かいのビルや眼下の道路からの明かりがぽつぽつと灯っていた。ルカはジャンの手を掴むとベッドから立たせて窓に手を付かせ、逃れようとするジャンの身体を背後から掻き抱いた。室内の灯りは落とされているため、外の街の夜景は一層明るく見えた。
「――ルカッ!」
ジャンの白い身体が羞恥で赤く染まっていった。外の道路には車が行き交い、ぽつぽつとだが人通りもあった。向かいのビルの明かりの灯った窓の中には人影もあった。ルカはジャンの恥じらう様子に笑みを浮かべた。ジャンの身体を窓に押し付けるようにして、その羞恥を更に煽った。
「向こうのビルの3階、見えるだろ? 窓際でスーツの男が煙草吸ってる。真面目そうな顔した奴だな。いつ、オレたちに気が付いてもおかしくない」
「ッ……やめて下さい……」
「違うだろ? ジャン。ホントは早くオレに犯されたくて仕方がないんだ。本当のアンタの姿をさらけ出せよ……」
ルカは屹立した自身をむき出しにし、先ほどまで指で蹂躙していたそこに先端を押し当てた。すっかり解されたそこは、まるでルカを招くようにひくついていた。ルカは昂揚し、早くその中を蹂躙して、声が枯れるまでジャンを喘がせてやりたい衝動に駆られた。
「ルカ……、ルカ……」
うわごとのように自分の名を口にするジャンの姿に、ルカの征服欲は心の底から満たされた。普段「牧師」として接してくるジャンとは違い、ただの男としての、肉体を持った人間としてのジャンがそこに居た。自分と同じ、ただの人。
「――アンタは、今だけはオレのものだ。ジャン」
「アッ……ああ!」
ぐ、と腰を沈めてルカが中に押し入ってくる感覚に、ジャンは思わず高い声を上げた。ルカが本能のままに、獣のごとく腰を揺らすと、ジャンの口から甘い喘ぎが漏れてきた。
「くぅ、あ、ル、カ……ア、ああ、あ……」
次第にジャンの上体がずり下がり、腰を突き出した格好になって来たところを、ルカはもう一度ジャンの身体を窓に押し付けるようにして立たせ、背後から手を伸ばしてその顔を上げさせた。
「目、開けろ」
ジャンはルカに言われたとおりに、溢れてきた涙で湿った瞼を開いた。眼前の闇にはルカに貫かれた自分の痴態が映り、少し目を上に向ければ、煙草を吸い終えたらしい向かいのビルの男と目が合いそうになった。思わず再び強く目を閉じ、首を振った。
「ちゃんと、見ろよ。ほら、あいつ、今にも気が付きそうだぜ」
「――ッ、やめて、下さい」
そう口にしながら、ジャンの中はもっとと求めるようにルカを締め付けてきた。それに気を良くして更に激しく腰を振れば、湿った音が暗い室内に響き、ふたりの吐息と体温が交じり合って、卑猥な空気で満たされていった。
「見て、欲しいんだろ、本当は……」
「いやッ、いや、です……ルカ、ルカ……あ、あ」
「最ッ、高。気持ちイイ。ハッ……。ヤらしい、身体、してるぜ、アンタ」
「もう、ルカ……、もう……ッ、アッ、ハッあ、アアア」
ジャンの上げる声が上ずり、開き放しの口から溢れ出る唾液が漏れた。そのけだもののように淫らな自分の姿にジャンは羞恥した。しかし、内側をルカに犯される快楽にその羞恥は取り込まれ、理性がその熱に溶かされていくようだった。
ルカに犯されている内側とその吐息を感じる耳元と、感覚がそこにばかり研ぎ澄まされていった。甘く熟れた果実のように、果汁を滴らせて喰われる悦びに身を悶えさせながら。
「ルカ……、ルカ……、ルカ、ァアアア!」
「クッ……」
ジャンの後孔が一層強く収縮してびくびくとルカを締め付け、ルカはジャンという果実の中に精を放った。ジャンの全身にその甘美な感覚が行き渡り、引きつったように震えた。
「あっ……、ハア、ハア……」
絶頂の余韻に浸るジャンの肩に暖かなルカの唇が降りてきて、まるで骨に残った喰い残しを削ぎ取るように、舌で舐られた。そして確かめるように、その手がジャンのモノに伸びてきた。クク、と笑う声が静かに響いた。
「――後ろだけでイッたのか?」
「わた……しは……」
窓を滑り落ちそうなジャンの身体を支えながら、ルカはジャンの身体を自分に向かい合わせて、その唇を吸った。ジャンは貪るようなそのキスを受け容れて、自分もまたルカの舌に自分の舌を絡み合わせた。
ルカの舌が口腔から離れて、眦から伝ったジャンの涙を舐め取った。それから首筋を下り、鎖骨の下にあった傷をなぞった。
「イケない子だね、センセイ」
そう言い見上げてくる薄氷色のルカの視線を、ジャンはまだ快楽の抜けきらない濡れた視線で受け止めた。ルカの目は更に欲望を求める色を湛えていたし、ジャンの目にはそれを希う肉体の願望が映っていた。
「もう一回しようぜ。夜明けまではアンタはオレのものだ。今度はアンタの顔見てヤリたい。アンタがどんな顔であんな甘い声出すのか、教えてくれよ」
囁くようなルカの声にジャンは半ば朦朧とした頭で考えていた。
自分がルカのこの言葉に従うのは、賭けの代償としてだ。そうでなければ、そう自分に言い聞かせておかなければこの獰猛な瞳に全て食い尽くされてしまう。肉体だけでなく、理性も、心も。
しかしその全てをルカに喰い尽されるというイメージはどこか甘く、ベッドに戻って行為を続ける間もジャンの脳裏をずっと離れなかった。
fin
岸辺さん作、ルカ×ジャンのエロSS。上階にある 『The fire within the snow』と併せて読まれるとイイかと思います。
あまりにも嬉しくて、僭越ながらイラストを描かせていただきました。容赦ないエロ文には容赦ないエロ絵で応える、がモットーです!
二人の間には愛がある・・・。なのにイラストのルカが鬼畜顔ですみません〜;そして懺悔室と被ってしもうたー(泣)
岸辺さん、どうもありがとうございました!またお願いしますv(こんな所でおねだり)
[2012年 5月 23日]