The fire within the snow
(6)




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6、エピローグ

 イブの夜。教会の上には薄っすらと雪が降り積もっていた。
 ミサを終え、聖堂の中では青年会の若者たちがマタイの受難劇をやっていた。

 私はひとり抜け出し、庭に出て、ひらひらと舞い降りる雪を眺めていた。

 天から舞い降りるそれは、既に天に召されたものたちからの贈り物なのだろうか。そんなことをぼんやりと考えた。
 私がかつて殺めたものや、看取った者たち、アニーや、それから、ルカ。
 ルカと出会った日も、確か同じように雪が降っていたのだ。

 冷たい空気に身をさらしながら、牧師という仕事の孤独を、じっと噛み締めていた。
 多くの者と出会い、多くの者と別れ、その人生を見届ける。きっとそれだけがわれわれに出来ることなのだ。
 それだけ、と思う自分と、そんなに大きなことが、と思う自分が居た。
 それはとても孤独で、けれどそうして移り行く人の命の様相を眺めていくことで、きっと普遍のものにたどり着けるのだろう。それが、この仕事に与えられた希望のように思えた。

 聖堂の中から歌が聞こえていた。私は目を閉じて、その歌声に耳を澄ませた。

 何かの気配を感じ、ふいに顔を上げると、教会の門の向こうに、ミイラが見えた。
 唐突なその出現に、一瞬その正体が分からず呆気に取られてしまった。

 しかし、包帯とギプスだらけのその人影が誰なのか、思い至って私は駆け出した。

 その命の温もりを確かめるために。
 自分の命の温もりを彼に与えてやるために。

 それさえ出来れば、何度でも人はまた、踏み出すことが出来るのだから。


Fin





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主人公ジャン牧師の迷い、苦悩、厳しさ。それらを抱えてなお聖職者であらんとする真摯な姿に胸を打たれました・・・。
野垂れ死にするしか道がないような悪党ルカを「幸せにしてやりたい」という思いで始まった岸辺さんの構想。幸せになれたのはルカだけじゃありません。
ルカを愛して下さって、ジャンと出会わせて下さってありがとうございました。そして素晴らしい物語を綴っていただき、心から感謝致します。

[2010年 12月 24日]