今夜は約束があるというガブリエルと別れたのはまだ宵の口。 これからどうしようかと思いながら街をほっつき歩いていたらレディ・ジョーから電話がかかって来た。 晩メシを食べに来いと言う。 レディ・ジョーは日曜日の夜、たまに俺を自宅に招いてくれる。 そういえば久しぶりの招待だなと思い、ありがたく伺うと答えて電話を切った。 『ネオ・トリアノン』に近い、築100年のアパートの最上階。 約束の時間ちょうどにレディ・ジョーの部屋のドアをノックした。 めずらしく時間通りね、と言うオカマに好物のはずのカヌレの入った箱を手渡し、俺って真面目だから、と答えた。 古いがきちんとメンテナンスされたアパート。部屋の中もマメな住人の性格そのもので、掃除が行き届いて居心地がいい。 レディ・ジョーはもうずっと前からここで一人暮らしをしている。 恋人は居ない。俺と知り合ってから男の影を見た事がない。今はもう会う事が叶わない一人の男を想い続けて生きているのだ。 「座りなさい。もう料理できているから」 言われた通り大人しく座ると、目の前の皿に盛られたのはチキンとトマトの煮込み。 「おふくろの手料理だな」 レディ・ジョーは家庭的だ。経営者としての時間から解放されても日常の家事の手を抜かない。煮込み料理には時間と手間と愛情がたっぷりかけられた味がした。 「あんたのために沢山作ったんだからおかわりしなよ」 「する。美味いなこれ」 こんな手間のかかるもの……。俺のために作ったって事は早い時間から俺を呼ぶつもりだったらしい。俺が誘いを断っていたらどうするつもりだったんだろう。 レディ・ジョーは親も兄弟も居ない。もちろん子供も居ない。この部屋に食事に訪れる人間など、俺以外に居るとは思えない。 寂しくないのだろうか……。 プロレスラーみたいにごつくて口が悪くてすぐ手が出る暴力オカマだけど、こんななにげない瞬間に俺はこの人がたまらなく儚く見える。 「ねえ、彼氏が死んで何年?」 思わずぽろりとそんな言葉が口から出た。 「なんだね、藪から棒に」 ギロリとした眼力につい怯んだ。殴られるんじゃないかと思わず手で頭を庇う。 だが拳は飛んでは来なく、代わりにため息が聞こえた。 「……15年」 15年……。この強気なオカマの、ひとりぼっちで世の中と戦っている年月。 「寂しくねえの?」 「ああ?寂しいと思う暇なんかないよ。店は忙しいし、あんたには手ェかかるし」 「俺は彼氏の代わりにならないじゃん。ってか、あんたの恋人なんて御免だし」 「気色悪い事言うんじゃないよ!この馬鹿息子!」 今度こそ鉄拳が飛んできた。頭の真上から垂直に。頚椎が折れるかと思った……。 こんな凶暴なオカマに恋人が居たって事が信じられない。 そのもの好きな男とは10年間付き合っていたという。 当時レディ・ジョーは世界的にも有名なパリのキャバレーに居た。嘘みたいな話だが20代の頃はうんと痩せてて美人だったそうだ。 もの好きな男はいい家柄の子息で、レディ・ジョー目当てに毎夜キャバレーに通いつめ、やっとの思いでモノにした。 由緒正しい家柄の子息と水商売のオカマってだけですでに絶望的な恋愛だが、さらに男は結婚していた。そんな状況で10年間続いたなんて、奇跡としか言いようがない。 俺は最近までそこまでの話しか知らなかった。 そんな、世間の目から逃れ続け隠し通さなければならなかった恋愛のつらさなど、レディ・ジョーにとってつらいうちに入らなかったのかもしれない。だから俺に問われるまま語ってくれていたんだろう。 二人を引き離したのは、世間の冷たい風でも当人たちの弱さでもなく“死”だった。 競馬場で彼は倒れた。突然の心臓発作。 二人でレースを楽しみ、レディ・ジョーが飲み物を買いに行ってる間の出来事だった。 彼の元に戻った時、周囲の客たちに囲まれて心臓マッサージを受けている彼の姿が目に入った。それきり、再び心臓が動き出す事はなかったという。 レディ・ジョーは単なる知り合いを装い、彼の妻に電話をかける事しか出来なかった。 「何がつらいって、愛する人の死に目と葬儀に立ち会えなかったって事ほどつらいものはないよ」 レディ・ジョーはそう胸の内を語った。 15年、かかったのだ。人に話せるようになるまで……。 決して短い年月じゃない。到底俺には届かないその強さも優しさも、乗り越えてきた一年一年の積み重ねがあってのものなんだと思う。 今夜の俺は、どこかでそんなレディ・ジョーにすがる気持ちがあったのかもしれない。 「あたしの話はどうでもいいんだよ。あんた、何かあったんじゃないかい?」 そんなふうに水を向けてこられた。 「別に……何もねぇよ」 何もない、と言えば何もないのだ。というより一体何をどう話せばいいのか、俺にだってわからない。 「あんたが空港で会ったべっぴんさん……」 直球ど真ん中のセリフに思わず硬直した。 「夕べ閉店近くに来たお客さんだろ?」 「……なんでわかったの?」 「わかるさ。たしかに目を引く美人だったからね。それに、その時のあんたのやに下がった顔といったら……」 うっ、と言葉を飲んだ。俺は一体どれほどだらしなくニヤついた顔をしてたんだろう。 「いや、だってさ。別れ際の俺の軽い誘い憶えてて本当に来てくれたから、びっくりしただけだって。他意はねえって……」 「アクセル?」 「本当だって!だいたい俺ストレートなの、あんたも知ってるじゃん。いくら美人ったってヤローだよ?あの人。細っこいけどがっちり筋肉質な身体してるし」 「アクセル……」 「しかもさ、俺より9歳も年上だってさ。超びっくりだよな。32つったらイイ年じゃん?恋愛なんてマジでありえねえって」 俺は何を口走っているんだか、何を取り繕っているんだか、自分でも次第にわからなくなっていき、笑い飛ばそうとやっきになっていた。口を開けば開く程どんどん深みにはまっていくのを感じながら、それでも止まらない。 「わかったから、もうおよし」 レディ・ジョーにストップをかけられて言葉は口の中に押し込められた。まだ何か言わないと、という思いで唇が震えた。 「本気になっちまったんだね?」 そう言われた途端、俺はすべての抵抗を放棄した。 「だって……だってよ」 情けないくらい声が震える。助けてくれよと叫びたくなる。 否定し抗おうとしたこの感情の正体を自覚してしまって、そいつをどうしたらいいのかわからない。今の俺は心細さに鳴いている迷子の犬ころと同じだ。 「今日一日一緒に過ごしたけど、あの人の名前も知らねえんだ。男で、間違いなくゲイじゃなくて、しかも外国人だぜ?いつか居なくなる人に何を期待できるんだよ」 「それでも好きになったんだろ?」 レディ・ジョーの声は優しい。 「あの人はやっぱ大人だよ。俺なんかお話にならないくらいガキなんだろうな。あんなきちんとした大人の男がこんなちゃらちゃらしたガキ、相手にするわけねえよ」 「たしかに育ちが良さそうな人だけどね。でもきな臭さをまとっているよ……」 きな臭い?どういう意味だ……? 「今までずいぶん酷いものを見てきたような目をしている……。確信はないけどね。いずれにしても平凡な人生の人じゃないよ」 すべてを見通したようにレディ・ジョーは言う。何十年も水商売に携わってきてさまざまな人生を見つめてきたせいか、ほんの少し接しただけのあの人をきっぱり言い下した。 何も映さないガブリエルのダークブルーの瞳を俺は思い出した。 今まで何を見てきたのか。沢山の死だろうか。裏切りや絶望だろうか。 たとえそうであっても、それらを抱えて背筋を伸ばし歩くガブリエル。 「それでも好きだ……」 そうかい、と聡明なオカマは頷いた。 「呆れてないの?ソフィと別れたその日のうちにこんな……」 「恋は交通事故みたいなもんさ。望んでなくても、ある日突然どこで遭遇するかわからない。好きになったものは仕方ないよ」 ああ、ガブリエルと同じ事言うんだな。 「これが交通事故だったらでかい事故だな。なんで回避できなかったんだろうって……遅すぎるけど……」 「傷付くのが怖いのかい?」 「いや……傷付けるのが怖いんだ」 俺はたぶん自分を制しきれない。心が暴走したら何をするかわからない。自分の気持ちの重みで相手を押し潰してしまうかもしれない。大切にしたいはずなのに……。 「アクセル、誰も傷付かない恋愛なんてあたしにしてみればそれはおままごとだよ。血を流し合った後、這い上がって来るのが大人の本当の恋愛なのさ」 とりあえず鼻をかめ!と言われてティッシュの箱を投げられた。 いつの間にか俺は鼻をすすっていたんだ。カッコ悪い……。 「泣くんじゃないよ、みっともない」 「泣いてねえだろ、クソオカマ!」 レディ・ジョーは深いため息をついた。 「いずれにしても交通事故は起きちまったんだ。無かった事には出来ないだろ?自分で起こした事故は責任持って最後まで見届けてごらん」 そうなのだ。後戻りは不可能だって事はとうに気が付いていた。つまり前を向いて歩くしかないのだ。選択の余地など最初から無かったのだ。 「なあ……」 「なんだい?」 「愛してるよ……」 レディ・ジョーはフンと鼻を鳴らし、横を向いた。照れている時のいつもの癖だ。 「知ってるよ、そんな事……馬鹿だね」 そんな言い草がうれしくて、俺は笑った。 レディ・ジョーのアパートを出て帰ると10時をまわっていた。 2階へと上がる階段の踊り場で、俺の部屋の前に座り込んでいる男の姿が目に飛び込んだ。 「ルカ……?」 煙草を吸いながらそいつは、よォ!と手を上げた。 「帰って来ないんじゃないかと思ったぜ」 見れば、奴の足元にはすでに吸殻が5本。一体いつからここに居たんだか……。 こいつが来たという事は、ろくでもない話を持ってきたに違いないが、取り敢えず部屋に入れないわけにはいかなかった。 「コーヒーでいいか?」 あいにくビールを切らしていたのでそう声をかけると、ルカはうれしそうに、悪いねと答えた。 悪友で相棒……。もう10年以上の付き合いだ。 ほんのハナタレのガキの頃からつるんで盗みを働いた。 二人揃って要領が悪かったので、仲良くギャング団の連中からよくボコボコに殴られていた。つまり俺もルカも単品になると役立たずだったのだが、そんな二人がペアを組むとなぜか仕事がうまくいく。俺が計画を立て綿密に作戦を練り、ルカが度胸の良さと行動力で俺をフォローしながら動く。 そんな時にゾーイと出会い、二人とも引き抜かれた。 ルカはお調子者で人懐っこい、憎めない男だ。 だが、俺は時折こいつが怖いと感じる。度胸がいいとか怖いもの知らずとかいう範疇を超えている。まるで死に場所を探しているようだ。 それは、俺がルカやゾーイと少し距離を置くようになってからますます酷くなってきている。 ルカは俺の言葉に耳を傾けない。 誰がお前を救ってやれるんだろうな……。 「そういや女と別れたんだって?」 久しぶりに入った俺の部屋を見渡しながら、ルカはニヤニヤ笑う。 俺からコーヒーを受け取って、いい女だったのによ、と呟く。たぶん奴なりのなぐさめのつもりなのだろう。 「ソフィとはもともと生きる世界が違ったんだ。元の生活に戻っただけさ」 「女、紹介してやろっか?」 「余計な気ィまわすなよ。それより世間話しに来たわけじゃないだろ?ルカ」 ルカは、へへっと笑って時間を稼ぐように煙草に火を点けた。 「お前にこの荷物預かってほしいのよ」 さっきから気になっていた、こいつが持って来た黒いナイロン製のバッグ。2、3泊の旅行にちょうどいいくらいのサイズがひとつ。 ルカは足元からそれを持ち上げ、目の前のテーブルに乱暴に置いてソファにふんぞり返った。どしんという音からして結構な重量らしい。 「……中身はなんだよ」 俺は突っ立ったまま煙草を咥えて火を点けた。 部屋の中を嫌な空気が流れる。 「中身はなんだって聞いてんだよ!」 猛る俺を、奴は可笑しそうに喉の奥でククッと笑い、悪魔みたいな笑顔で見上げた。 「誰にも見せるなよ?俺とお前の取り分だ」 「……てめェ!」 俺はバッグに飛びつき、乱暴にファスナーを開いた。 透明なビニール袋に閉じ込められた、きめの細かい白い粉末。たぶん一袋300グラム程。それがバッグに何十袋あるのか……。 ガキの頃から何度となく扱ってきたその白い粉末は、結構上質な物だと見てとれる。 ヘロイン――。俺の専門分野だ。 「何やってんだよ……お前は……」 予想通りの代物に、俺は最悪な気分でソファに沈み込んだ。 「今日、新規の客と取引きがあったんだ。アメリカ人だ。品物は極上なのに、よほど現金が欲しいのか言い値は格安ときた。お前ならこの価値わかるだろ?」 吐きそうな気分の俺にはおかまいなしでルカは喋り続けた。 「これはそのうちのほんの一部だ。この程度頂いてもわかりゃしねえ。しかも今回だけじゃないんだぜ。これからも定期的に取引きが行われる」 何を喜々としてるんだ、この男は。 「お前は売買の度にこうやってピンはねし続けるつもりなのか?」 「俺がブツを調達し、お前がそれを捌く。今までと同じさ。あのアメリカ野郎は大雑把なんだ。ほんの少し除けといて残りはゾーイに渡す。バレっこねぇよ。お前が黙っていればな」 「お前はゾーイを甘く見ているぜ。俺が黙っていたってゾーイは必ず気付く。殺されたいのか?」 ゾーイ――。本名は知らない。俺とルカの雇い主。 このレ・アールを中心にパリを牛耳る裏社会のボス。 ゾーイは合法、非合法問わずなんでもやる。 レストランやクラブの経営。売春、銃や麻薬の密売。パリのきらびやかさも汚物も作り出す男。もちろんパリ市警には常に目を付けられている。 年は70を過ぎているはずだ。人の好さそうな年寄りは、その外見から想像もつかない残酷さを持ち合わせている。欲しい物はどんな手段を使っても手に入れ、いらない物はあっさり捨て去る。ゾーイが一言命令すれば、翌日の朝を待たずにその人間はこの世から居なくなる。 狡猾で、狙った獲物は逃がさないやり口と白髪の風貌から、見かけは愛くるしいが獰猛な猛禽に例えられ、付いたあだ名は“白ふくろう”。 ゾーイは残酷な反面、情が深い。だからこそ生意気で世間知らずな俺たちがここまで生きてこられたのだ。 だが、今ルカがやろうとしている事はさすがにやばい。 大量のブツのほんのわずかだとしても、これは裏切りに他ならない。量の問題ではないのだ。 嘘をつく、誤魔化す、言い訳する、信頼を裏切る。ゾーイが最も嫌いな事だ。 「アクセル、物事は要領良くやらなきゃダメだぜ。それに今まであのジイさんにさんざん尽くしてきたんだ。ささやかなチャンスに乗って何が悪い」 「とにかくダメだ。俺はもう手を引くと言ったはずだ。これは預かれねえ。返してくるんだ」 俺は最終通告とばかりに言い捨てて、空のコーヒーカップを手に立ち上がった。 「わからねえ奴だな、お前は!」 ルカはイライラと声を荒げてキッチンまで俺を追ってきた。 「もう動き出したんだよ!返すだと?今からブツをゾーイに返したところで俺が許されると思うのか?」 俺を壁に追い詰め、逃げ道を塞ぐように手をついて顔を寄せてきた。 「いい加減自覚しろよ、アクセル。客に酒を作ってるお前なんか本当のお前じゃねえ。お前の銃の知識とヤクの目利き、なぜそれを活かさない?足を洗うだと?今さら何言ってんだ。お前はどんなに足掻いても所詮はパリの汚物の一部にすぎねえ。その身体に染み付いた火薬の臭いと粉まみれの手は一生きれいに拭えないんだ。そうだろ?売人アクセル!」 売人アクセルか……。お前の言う通りだ、ルカ……。 初めてヤクを売って金を得たのは13歳。次の年にはゾーイの手下から教わりながら銃器関係も扱うようになった。 『旦那、どんなのがお望み?リボルバー?オートマティック?これなんか護身用にもってこいだよ。なに、もっとデカイのがいい?じゃあお勧めはS&Wの44マグナムだね。今ならホルスターもおまけに付けてやるよ。ところでヤクは間に合ってんの?上物のハシシが入荷したけど、試してみないかい?』 そんなセールストークで、俺は今まで何人の人間をダメにしてきただろう。 オーバードーズで命を落とした顧客が何人も居る。俺が売った銃で誰かが殺されたかもしれない。ジャンキーにいたっては掃いて捨てるほど生み出してきた。 俺は汚物なのだ。キャリア10年のプロの売人。 こいつの言う通り一生この手の汚れが落ちないなら、いずれこの自己破滅的な男と共に命を落とす運命なのだろう。 レディ・ジョーの涙でぐちゃぐちゃになった顔を思い出す。俺を馬鹿息子と呼んでくれる凶暴で心優しいオカマの母親。 俺が作ったカクテルにおっかなびっくり口を付けて、弾けるような笑顔になる客たち。 日々の、そんな小さな幸せを望む事はもはや許されないのだろうか。 今夜、返品不可の代物をここに持ち込まれて、俺は逃げ道がない。 ゾーイに返して謝って、それで許されるならそうするだろう。 俺の知ったこっちゃねえ、と言い捨ててルカをバッグごと部屋から放り出すのは簡単だ。 だが、俺には出来ない。 利用されているのがわかっていても、この薄笑いを浮かべながら破滅に向かって暴走する悪友を黙って見捨てる事など、どうしても……。 俺は深くため息をつき、目を閉じた。 「へへ、そうこなくっちゃ」 ルカは俺の頬をぴたぴたと叩いて笑った。 「お前は本当に優しい奴だぜ、相棒。お前はいつも俺を裏切らねえ」 腕を壁から離してようやく俺を解放したルカは、満足そうにもう一本煙草を咥えた。 「そういや、ひとつ気になる事があるんだがな、アクセル」 この期に及んでまだ文句があるのか、と俺は少しイラついてポケットから煙草を取り出す。 「今日の昼間、男と一緒に街を歩いていただろ」 俺は驚いてルカを見た。 ガブリエルの事を言ってるのか……? 今夜この男から、あんな話のついでにガブリエルの話を持ち出される事に、たまらなく違和感を覚えた。 「お前たちを見たゾーイは酷く動揺していた、ってか怒ってたみたいだぜ。アクセルの奴、なんでブライアントと一緒に居やがるってな」 ジッポに火を点したまま、俺は息さえするのを忘れて固まった。 ブライアント……? 「アクセル、お前……まさかデカと付き合ってるんじゃないだろうな」 俺の脇腹を、不快な汗がつうっ、と流れた。