海辺の家に帰ると、すぐにバスタブに湯を張った。
さんざん泣いて泣き疲れたアクセルの顔を、明るい照明の下で見た時、酷く憔悴している事にいささか驚く。俺に遠慮して、先に風呂を譲ろうとしたアクセルの尻を膝で蹴って、問答無用でバスルームに押し込んだ。
岬からの帰り、アクセルはずっと無口だった。
機嫌が悪いわけでも落ち込んでいるわけでもなさそうだ。話しかけると屈託のない笑顔で、俺の倍は言葉数多く答えを返す。うるさいくらいの受け答えが終わると、また神妙な顔で黙りこむ。
たぶん、こいつなりに何か難しい考え事をしているのだろう。
ただ、ここ数日アクセルを悩ませていた馬鹿げた妄想ではないと思った。気が済んだらきっと何か言ってくるだろう。だから今は詮索せずに放っておく事にした。


アクセルの次に自分ものんびり湯に浸かり、上がった後簡単なカクテルを作った。
氷を入れたタンブラーにドライジンとトニックウォーターを目見当で注ぎ、その上から直接ライムを絞り入れる。かなり大雑把な作りのカクテルを持ってテラスに出た。
手摺に身を乗り出して、月を見上げながら煙草を吸っていたアクセルの背後から近寄り、頬にグラスを押し当てる。
「ジントニックもどきだ。飲めよ」
「うわぁ、あんたに酒作ってもらうなんて光栄だね」
「いい加減な作りだ。お前と同じようにはいかないな」
「はは、同じだったら困るよ。俺は一応プロなんだから」
アクセルは一口飲み、風呂上がりに最高!と大きく息を吐いた。
「飲んだらもう寝ろよ。今日、疲れただろ……」
今日一日で、アクセルは何度も感情を爆発させた。恐怖、怒り、悲しみ……。おまけに俺の顔をぶん殴り、最後の最後には子供のように大泣きした。体力も気力も随分すり減った事だろう。
「うん……でも、きっと眠れねえよ。脳がまだ興奮しているし……」
そんな奴の静かな言葉に小さく頷いて、暫く話し相手になってやる事にした。
アクセルにならって煙草に火を点け、気がかりに思っていた事を訊いた。
「岬での話はショックだったんじゃないか?……知らない方がよかったか?」
柔らかい心……。アクセルに対してそんな風に思う。もっともらしい理屈で自分を飾り立てる事をしない素直な奴だ。何の心の準備もないまま突然連れて行かれ、見せられ聞かされた救いのない悲劇。気の毒な事をした、という気持ちは正直残る。
「そうだな……ショックではあったよ。でもさ、あの岬があんたにとって大切な場所で、話してくれた事はあんたの心の深い部分でさ……。それを俺に触らせてくれたって事がすげぇ嬉しいの。あんたが“絶対死なない”って言ってた意味も知る事が出来たしね」
おっ?種だ……と、グラスをあおったアクセルは、口から指先にライムの種を出した。種を摘まんで掲げ、これはカクテルのデコレーション?とニヤニヤしながら訊いてきた。俺が、そうだと答えると奴は可笑しそうに笑った。
「――ひとつ訊いていい?」
笑うのをやめ、アクセルが真顔で言う。
「あんたの奥さんさ、もしも遺言を書いたとしたら、最後に何てあんたに言い残すだろう」
言われて、あらためて考えた。イザボーの事ではない。それを問うアクセルの気持ちをだ。
7年も前に死んだ人間について“もしも”と推測するのは意味がないし、永遠に答えが得られない謎を真剣に考えるのは不毛な事だ。そんな事をわかっていながら、それでも今それを問うアクセルの真意は――。
今でも俺の心が、どれほど死んだ妻で占められているのか。そんな事が知りたかったのかもしれない。
「あー、ごめん。ヘンな事訊いちまった……」
訊かれてから間が空いたためにアクセルが慌てた。
「……『地球の温暖化を食い止めて』……かもしれん」
「――はい?」
バイオテクノロジーの側面から、母と共に環境問題に取り組んでいたイザボーなら本当に言いそうだぞ、と本気でそう思う。
「夫への遺言に普通そう来るかい……」
「変わり者だと言ったろ」
「奥さん、あんたのどこに惚れたんだろう」
「さあな。何かいい所があったんだろうよ」
「惚れた理由も地球規模な視点なのかね」
「イザボーの視野は広大すぎて、常人には理解しがたい所があるんだ」
「じゃ、あんたと同じじゃん!」
何が同じなのかわからないが、腹を抱えて笑い出すアクセルに、いつしかつられて笑っていた。
「俺、何かあんたの奥さん好きだな!」
満面の笑顔でアクセルが言う。
「死んだ後にも、自分の旦那もろともこんなに人を笑わせてさ。それに何たって、ハリーが今の俺の好きなハリーになったのは、きっと奥さんのおかげなんだと思うし……。だからスゲェ人だよ!」

その、アクセルの言葉が俺の中に落ちてきた――。

イザボーを知らないアクセルと、こうして彼女の人柄を想いながら笑って話す。
涙や後悔や痛恨の思いではなく、愛や優しさを思い出す。
思えば……彼女が大西洋の海に消えたあの日まで、自分は毎日笑っていた。その最後の瞬間まで、間違いなく幸せだったのだ。
そして共に過ごした日々の中で、その日々より長くなった彼女を失った後でさえ、自分はイザボーという女に育てられていた事に気が付いた。
自分には何も遺して逝かなかったと思っていた。
だが実際には、一緒に生きた多くの記憶を、数多の言葉を、広大な世界を、そして何よりも愛という感情を、イザボーは俺の中にこんなにたくさん置いて逝った。本当に大切なものはすべて俺に与えて、それによってあの頃より成長した俺自身こそが、彼女がこの世に生きた唯一の証だったのだ。
7年もかかった――。自分がいかに幸せだったか、何を遺してくれたか、そんな簡単な事に気付くまで……。

「――泣きそうな顔してる」
その言葉に驚いて顔を上げると、慈しむようなアクセルの瞳があった。
「泣かんよ」
苦笑して答えると奴も困ったような顔で微笑んだ。
「泣いてもいいのに……」

――こんな風に優しい奴なんだよ、イザボー……。

「あんたが本当に泣きたい時、俺……あんたの傍に居たいな……」
そう言うアクセルの顔があまりにも切なげで、だからつい奴の頭に手を伸ばした。
俺の手に引かれるまま、躊躇いがちに顔を寄せてくる。

――俺の事がかわいそうだと言って、ガキみたいに泣くような奴なんだ。

「その時になったら……お前を呼ぶさ……」
そして目を閉じた。

――こんな今の俺を、君は笑うかな……。


躊躇うように、戸惑うように、ゆっくり小さく、何度も角度を変え、唇が触れては離れる。
その度に深くなっていく口付けに躊躇いはいつしか消え、もっと、とばかりに舌を差し出してせがんだ。そんな俺に勇気づけられたように、アクセルは両手で顔を包み込むと、あらためて深く舌を絡めてきた。
熱くて、苦しくて、口内を舌で淫らに愛撫される心地よさに、理性が飛びそうだ……。
存分に貪り合って唇を離した後、気恥ずかしくなって顔を背ける俺に、アクセルが言った。
「あんたに話さなきゃと思っていた事があるんだ……」
深刻な声色に思わず目を上げる。
「これを言ってしまうと、もう一緒に居られなくなるような気がして……正直言って怖い」
「――何だ?」
岬の帰りからずっと神妙な顔をして考え込んでいた事か、と思い当たった。
先を急かさず、辛抱強く待ってやる。奴は躊躇った後、あらたまった顔で話し出した。
「やっぱり俺には無理だ……。あんたが望むような友達には、俺……なれねぇよ!だって……だってさ……!」
たった今、あきらかにお互い求め合ってがっつくようなキスをしたというのに、随分と謙虚な思考パターンだ、と呆れた。
「何かと思ったら」
笑いを含んだ俺の言葉に、アクセルは大きく目を見開いた。
「それを言うのに随分かかったな」
「――は!?」
「まあ、妙な妄想に取り付かれていたんだから仕方ないが……にしても遅い」
アクセルの目がますます大きく見開かれて、目玉が落っこちそうだ。
「気が長い方じゃないんだ。待ちくたびれた」
俺の言葉に奴はしばし呆然として、深々と大きなため息をつく。顔はげんなりと憔悴の色を深め、脱力したように俺の肩に顔をうずめてきた。
「……いつから?」
肩の上で顔を伏せたまま恨みっぽい呟き。
「カクテルで口説かれた時から」
「はあぁっ!?」
弾かれたようにアクセルは顔を上げ、俺の顔を覗き込んだ。
絵に描いたような間抜け面が可笑しくて、自然と口元が緩んでくる。
「パリを出る前から……?」
笑い声を喉の奥にどうにか押し込んで、ゆっくりと微かに頷く。
「そんなに前から……!?」
やはり幾度も微かに頷きながら、次第に肩が小刻みに揺れてきた。
「――その間、俺がどんなに我慢してたか、わかってんの……?」
今度はゆるゆると首を横に振る。アクセルの、何とも憐れな表情にニヤニヤを抑えきれない。
「知るか」
言った途端、俺は我慢出来ずにとうとう笑い出してしまった。
「あんた……よっぽど俺にこっぴどく犯されたいらしいな……」
こいつにしては精一杯の凄みをきかせてふざけた事を言う。
それでも笑い続ける俺に、ついにアクセルはキレた。
「――あったまきた!」
俺の手から空のグラスを取り上げてテラステーブルに置くと、奴は俺の腰の辺りで身を屈め――。
「あ?……うわっ!」
いきなり肩に担ぎ上げられた。
まったくの無防備だった俺は、上半身を逆さまにされて初めて慌てた。
「何するんだ!下ろせ、この馬鹿!」
振り返りそう叫んだところで、でかい手でおもいきり尻を叩かれる。本気で痛い……。
「――いっ……!」
「うるせえよ!」
アクセルは、そのまま俺をセメント袋か何かのように担いだまま、テラスを出、足早に部屋の中へと歩いて行く。相当頭にきているようだが、俺の頭がドア框にぶつからないよう、身を屈めてくぐる配慮くらいはあった。
居間を通り過ぎて、そのまま階段を駆け上がる。不安定な肩の上で揺られて、後ろ向きに上がると軽い恐怖を覚える。今落とされたら間違いなく肩か頭部を怪我するだろう。
「一体、どうする気だっ……!」
うわずった声で問いかければ、奴は、フン!と鼻で笑った。
「そんなの決まってんだろ」
淡々とした声でアクセルは言い放つ。
「あんたはこれから“こっぴどく”俺に犯されるんだよ、少佐」
辿り着いた先はアクセルの寝室で、部屋に入ってドアを閉めるなり、俺はまるで粗大ごみのように、ベッドの上に放り投げられた。
身を起そうとしたとこでアクセルが身体に乗り上がってきた。
「ハリー、あんたをちょうだい。もう一度……」
さっきまでの凶暴ぶりが嘘のように、真摯な目で俺を正面から見つめ、アクセルは言った。
「今の俺たちはあの時とは違う……。相手が何者なのか知っていて、気持ちも知っていて、お互い覚悟も出来てるんだ。だからもう一度始めよう、ハリー……」

あらためて俺たち……初めてのセックスをしよう――。




月の光が明る過ぎる――。
いっぱいに満ちた月が、深夜の冷えた空気の中で冴え冴えときつい光を放つ。
着ているものをすべて脱がされ、裸身が月明りに照らされた。アクセルの視線が痛い。
身体を見られる事が堪らなく恥ずかしい……。
思わず腕を伸ばし、奴の目を手で覆った。一瞬、困惑したアクセルの口元が優しく笑う。奴は俺の手をそっと引き剥がし、両手共シーツの上に縫いとめると身体に覆い被さってきた。
肌を辿る手のひらの優しさに戸惑った。
アクセルの手が髪を梳き、指がそっと顔を撫でる。じれったくなるような、くすぐったいような……。手のひらが全身をくまなく撫で、舌が這う。こっぴどく犯すどころか、奴はまるで処女を抱くように優しく触れてくる。
愛撫のひとつひとつが丁寧で、自分は大事にされているのだなと思う。

だが……。

確かに、男同士でセックスする事は自然じゃない。身体にも負担がかかる。男でありながら、男に身体をまさぐられる事に対する抵抗感も拭いきれない。自分は野郎に触られて嬉しいと思った事など今まで一度もない。通常なら相手を半殺しにしているところだ。

だが……アクセル……。

「どうして欲しい?ハリー」
ふいにアクセルが顔を上げて問いかけてきた。
「あんたは俺にどうして欲しいの?」
俺の戸惑いを見透かすように、すべてわかっているように訊いてくる。
「……」

わからない……。けど、そんなのじゃなく……何かもっと……。

「もっと……」
「もっと、何?……言って」

もっと……何だろう……。

「もっと、どうされたいの?言えよ、ハリー……何が欲しいのか……」
アクセルの熱のこもった低い囁きが、耳から脳髄に沁み込んでいって、それは呪文のように俺の胸に反響する。
「あ……もっと……!」

ああ、だから!……もっと!

俺を見下ろしてくるアクセルの顔がやけに男っぽい。どっちが年上なのかわからないほど、今のこいつは大人の顔をしている。いつもは無邪気に、ある時は悪戯を企んでいるような鳶色の瞳が、今はなぜかどうしようもなく優しい色をしている。
そんな顔を見ていると胸が苦しくなった。
両手を伸ばしてアクセルの顔を引き寄せ、口付けた。
どんな風に舌を使えばこいつの欲望に火が点き、自分に夢中になるだろうと、まるで娼婦みたいな事を俺は考えている。そして俺にそうさせるアクセルに無性に腹が立った。
「本当に好きなら、もっと本気で私を奪えよ!この馬鹿!」
思わず怒鳴っていた――。

こんな事は間違っているのだと、何度も自分に言い聞かせて、何度も立ち止まって、“自分が居るべき場所”まで戻ろうとした。だが、振り返るたびにこいつは太陽みたいに笑って、俺に向かって両手を差し出している。俺の名を何度も呼びながら……。
アクセルの、人の死を恐れる当たり前の感情が、歪んで麻痺した俺の心を正常に戻す。かわいそうだと言って涙する優しい気持ちが、カラカラに乾いたこの胸に静かに沁み込む。

「アクセル……お前が欲しくて堪らない……」
胸が苦しくて、悲しくてそう呟くと、アクセルの顔から余裕のある笑みが消えた。
突然、力いっぱい抱き締められる――。
折れそうなほどきつい抱擁の中で、唇を塞がれ、息も出来ないほど激しく口内を貪られた。




「――ハァ、ハァ……ん、あ、あぁっ……!」
もう月の光など、どうでもよくなっていた。アクセルの視線も気にならない。いや、むしろ、愛撫に身を捩らせる俺の姿や快感に喘ぐ顔を見て、興奮するあいつに興奮した。
前と後ろを同時に攻められて、もう二度もイカされている。
自分の身体は一体どうしたんだ、と思うくらい敏感に感じてしょうがない。
アクセルが身を乗り出して唇を重ねてきた。
俺は奴の頭をかき抱き、待ちきれなくて自分から夢中で舌を絡ませる。
アクセルはその時、挿入した指を激しく動かし始めた。
「ン、ン――ッ!!」
口を塞がれて行き場のない嬌声は、高い悲鳴となって鼻から抜けた。より強く前立腺を嬲られて、喉の奥で嬌声が泣き声に変わる。堪らず奴の胸を両手の拳で弱々しく叩いた。
「――も……すっげぇ可愛い……!」
もがく身体を押え込みながら容赦なく指を動かし、奴は興奮した声で呟いた。

強い快感にわななく身体をうつ伏せにひっくり返され、アクセルが俺の中に入ってきた。
存分に解されたせいで痛みはない。意外にもゆっくりとした挿入……。
しかし、優しく思えたその動きは、思わぬ感覚を呼び起こした。
「――ッあ!」
ゆっくりであるが故に、狭い道を通って深く刺さってくるアクセル自身の形も、動きも、その存在自体、ありありと感じ取れてしまう。
アクセルが自分の中に居るのだと意識した途端、ザワザワ這い上がって来るこの感覚……。
身体の中心から生まれたこの感覚は、波紋のように全身に広がり、やがてはどうしようもない快感に、きっとなる……。その時、たぶん自分はみっともないほど乱れて……。
まずい……と思った……。
「――ッ……あ……あッ!」
「ハリー……あんた今、メチャメチャ感じてるだろ……」
ふいに背後から荒い息遣いが囁いてきた。
「……ち……ちが……!」
「だったら、何であんたン中……こんなに反応してんだよ……!何か……すげぇ……!」
ただ挿れただけなのに、と言うアクセルの声は苦しげで、暴走しそうな自分を抑えている。
そして奴は根元まで、一気に突き入れた。
「――く……ッ……!」
あられもない声が漏れそうになって、咄嗟に自分の手で口を覆った。
「聞けよ、ハリー」
アクセルは動きを止め、荒い息で囁く。
「あんたは、自分一人で生きていると思ってるようだけど、そりゃ大間違いだぜ?」
後ろから優しく髪を引かれ顔を上げられた。
「ハリーの事が大好きな人、いっぱい居るじゃん。あんた、全然ひとりぼっちじゃねえよ」
耳を甘噛みされてきつく目を閉じる。
「俺だって居るだろ?今だって、どんだけ深くハリーの中に入ってると思ってんの」
奴の手が俺の手首を掴んで、覆っていた口から無理やり引き剥がした。
「本当はね、あんたを奪いたいんじゃなくて俺をあげたいんだ。でも、今夜だけは別……」
アクセルは俺の腹の下に腕を差し込むと、より深く奥まで受け入れさせるため、腰を高々と引き上げた。
「今夜はあんたを俺のものにする……」
先端近くまで引き抜き、限界まで深く挿入する。その長いストロークの摩擦が、信じられないほどの快感を生む。弱い所を長々と擦り上げられて、もう自分を抑える事は出来ない。
「ひ、あ、ああぁ!やだ……ぁ」
「しっかり俺を感じろ!」
尻の中どころか、四肢の先まで奴の存在は満ちていって、自分が少しずつアクセルに征服されていくのを感じる。それは甘美な悦びだった――。

気が付けば、俺は絶え間なく大きな嬌声を上げていた……。
身体は堕ちて行くのに、意識が浮き上がって行くような、ちぐはぐな感覚。
後ろから全身をまさぐられ、身体を突き上げられ、与えられる快楽に狂いそうになる。抗う事も堪える事も出来ず、シーツにしがみ付いて、尾を引く甘ったるい声で鳴き続けた。
何か淫らな事を繰り返し口走ったような気もするが、よくわからない。
「……アクセル、アクセル……!あ、あッ!も……っと……ッ!」
気持ちよくて仕方なくて、髪を振り乱しながら、奴の名を何度も呼ぶ。快感を訴える。
もっと奥まで満たして欲しくて、自分から尻を突き出して、喘ぎながら強請った。
そんな俺の無茶苦茶な乱れぶりにアクセルが煽られて、奴は今度こそ本気で暴走した。
手荒く愛撫されて思わず悲鳴を上げた。が、それすらも快楽にすり替わる。
「――こんなに……こんなにッ!あんたは愛をたくさん持ってるってのに、何で気付かないんだよ!空っぽな人間だぁ?……ふざけんじゃねえッ!」
アクセルが俺に対して腹を立てている。怒りにまかせて腰を叩きつけて、俺を責めた。
奴の怒りについて、ちゃんと考える必要があると思った。きっとそれはとても大事な事だ。
あんたは一人じゃないのだと、空っぽじゃないのだと、アクセルは必死に俺に訴えている。
その事をよく考えてみたいのに、今は無理だ……。
過ぎた快感に身体が痙攣し始めているのに、アクセルは乱暴な突き上げをやめない。
思考が麻痺していく……。全身が蕩けていく……。
さんざん泣きわめきながら再びイカされて、俺は気を失ったらしい――。