紹介したい友人が居るから今夜3人で食事をしないか?――その日、ハリーにそう声をかけた。
   他人を交えるなどめずらしい私の誘いに、彼は少しだけ驚いた顔をして、いいよ、と承諾した。だが、甥であるという事は言ってないからそのつもりで、と伝えるとさすがに不審そうな表情をする。それでも彼は何も訊ねてはこなかった。


   学生時代ロベールと遊び歩いたマレ地区は今でも彼の遊び場だという。1階に田舎料理のレストランを配したこのホテルの常連にもなっているらしい。初めて訪れたこのホテルは、ランクはあまり高くはないが清掃が行き届いた落ち着きのある小綺麗なホテルで、従業員の対応も親切で丁寧だ。
   地元に住んでいながら、レストランだけでなくホテルの方も常連とはどういう事か――と不思議に思ったが、レストランの客が妙に男が多い事に気付き、成る程と思い当たった。ロベールはここを“一夜の愛の巣”として日頃利用していたのだ。こういうホテルはパリ中何処にでもある。
「はじめまして。ハリー君だったよね?僕はロベール・バルテス。よろしくね」
  ロベールが人懐こい笑顔でハリーに手を差し出せば、彼は礼儀正しくその手を握った。
「それにしても、こうして間近で見ると本当に綺麗な子だなあ」
  嬉しそうに微笑みかけるロベールに、ハリーは一瞬困惑した顔を見せた。男に綺麗だと言われて喜ぶような価値観をハリーは持ってない。彼は普通の男なのだ。それでも褒められた事には違いなく、彼は苦笑しながら礼を言った。
  我々は、気取らない庶民的な美味い田舎料理を楽しんだ。ロベールも料理と同じように気取らない会話でハリーを楽しませる。ロベールは話し上手で聞き上手で話させ上手だ。控えめなハリーから、アメリカの若者の間で流行っている遊びやヒットしている音楽の話、彼が好んで読む本や作家について喋らせる。
「インターネットの普及と本の売り上げは関係していると思う?」
「その作家は僕も好きだな。今年発表された作品は良かったよ。君はどう思った?」
「ここ最近のミュージックシーンは停滞気味だよね。新しいムーブメントの兆しはある?」
  何でこいつはこんなジャンルに詳しいのか、と思える話題を出してきては質問形式でハリーに語らせる。そして、実はハリーがサッカー好きだと知ると(私すら知らなかったのだ)身を乗り出しては熱く語り出す。間違っても親や政治や宗教の話はしない。だが、ロベールの会話のテクニックや口説きの手管はどうでもいい。ハリーの反応が気になった。
  ハリーに好意を持ってもらおうとするロベール以上に、ハリーは彼に気を遣っているのだ。質問には極力丁寧に答え、話す相手の目を見て相槌を打つ。可笑しな話に笑う。ハリーの一見打ち解けた様子は、実はロベールが私の友人だという事での気遣いなのだ。
  親にきちんと躾けられたハリーは、初対面のロベールに礼儀正しく接し私を立てるが、どんなに和やいだ雰囲気になっても心から気を許してはいない。おそらく、ロベールに対して警戒心があるのだろう。それは私を大いに満足させた。彼がごくたまに見せる小さな我儘や子供じみた甘え顔は私に対してだけであって、そんな素顔をそうやすやすと他人に晒す事はない。
  食後のコーヒーも飲み干そうとした時にロベールが伝票を手に取った。
「――じゃ、そろそろ上に行こうか。もうチェックインは済ませてあるから」
  何処に?という顔でハリーが私を見上げる。私は微笑みかけて彼の肩を抱き、会計をロベールに任せてレストランを出た。


  ロベールに案内され着いた所は5階のフロアだった。そこは廊下の突き当たりの角部屋で、隣がリネン室、向かいが階段室となっていて、つまり他の客室と接していない部屋だ。中に入るとごく普通のツインルームだった。シンプルでシック、白と茶を基調にした上品で落ち着いた室内。エキストラベッドが用意されているという事は、ロベールは3人宿泊として予約を入れたからだろう。
  部屋の照明を明るめに調節し、上着を脱ぎながらロベールが言う。
「――じゃあ早速だけど、彼の身体を見たいな」
  その言葉に、それまで黙って部屋を眺めていたハリーが振り返る。ロベールが微笑みながらハリーの前に立ち、あらためて言った。
「ハリー、君の裸を見せてくれる?」
「……どういう事?」
「あれ?ステファンから何も聞いてないのかい?」
  可笑しそうに笑うロベールからハリーの視線がこちらに向く。
「今夜、君はロベールのものだ」
  私の言葉にハリーの目が驚愕に見開く。この時になって、自分が知らず知らず檻の中に導かれた獲物だという事に、彼はようやく気が付いた。声も出せないまま、弾かれたようにその場から逃げようとした身体を一瞬早く背後から抱き締める。
「見せてあげるといい、君がどんなに綺麗な身体をしているか……。抱かせてあげなさい。君の具合の良さに、きっと彼は夢中になる」
  ハリーの耳に舌を這わせながら呪文のように囁くと、彼は身体の強張りを解き、息を震わせた。
「俺を……売ったの……?」
「売る?まさか。――貸してあげるんだよ。私の大切な君を……自慢の恋人をね、ハリー」
   熱を込めて彼の名を囁きながら手際よく背後からシャツのボタンを外していく。その間ロベールはハリーの前に跪いて彼のズボンのベルトを外していた。
「――待って……こんな、こんなの嫌だ……。嫌だ、ステファン……」
  二人がかりで衣服を肌蹴させられる間、ハリーは唇をわななかせ、茫然とされるがままになっていた。そして、ボタンがすべて外れシャツを開くと同時に下着ごとズボンが膝まで下ろされる。晒された裸身にロベールが感嘆の息を漏らした。
「何て綺麗な身体なんだ……」
  ハリーの身体を後ろから抱き込んで支え、ロベールが触れ易いように身体を押して突き出させれば、彼は興奮した面持ちで早速手を伸ばしてきた。手のひらを胸から腹に滑らせ、尻に回し腿を撫で上げ、性器を弄ぶ。その間、ハリーの肌がいかに滑らかで瑞々しいか、乳首が可愛いか、性器の形や金色の恥毛を、小さな尻のふくらみを褒めちぎった。
「やめてください、バルテスさん……ステファン……!嫌だ」
  声を詰まらせ儚げな声でハリーは訴えたが無視された。
「肛門もよく見たい」
「どっちから?」
「後ろから……いや、この子の顔と性器も一緒に見ていたいからまずは仰向けがいい」
  ハリーが抗議の声を上げる暇もなかった。私が脇を抱えロベールが脚を持って、無力な少年の身体を軽々持ち上げベッドに横たえさせる。同時に素早く彼の身体に引っかかっていた衣服をすべて脱がせた。
  脚を開かせるため膝に手をかけた時、それまでされるがまま震えていたハリーが猛然と抵抗し始めた。
「嫌だああぁぁ!」
  肩を押さえ付けたが脚をばたつかせたため両足首を掴んだ。
「大人しくしなさい!」
  滅多に大声を出さない私の怒声に、ハリーは驚き一瞬動きを止め、悲しげに顔を歪めた。
「何で?ステファン……。どうしてこんな事するんだよ……?」
  泣き出しそうなハリーの目を正面から見つめ、きっぱりと言い聞かせる。
「君が私のものだからだ……。何でも言う事をきくと言ったのは嘘だったのか?」
   最低の事をしている自覚はあった。愛される事だけを望む少年は盲目的に私を信じてくれた。だからこそ告げられた彼の誓いの言葉を、自虐ともとれる彼の信頼を、私は逆手にとって彼を裏切ったのだ。
   私の言葉に彼の精神は奈落に突き落とされる。彼は絶望に固く目を閉じ、震える唇を噛んで暴れるのをやめた。自分が信じ頼りにしていた叔父が首謀者となって、今夜の茶番は仕組まれたのだ。どんなに抵抗しても男たちは自分を許しはしないのだと悟っただろう。
   ハリーの頭側にまわり、掴んだままだった両足首を引き上げた。その脚をロベールに向かって限界まで大きく開かせると、明るい照明のもと差し出されたハリーの局部に、ロベールは飛び付くように顔を近付けた。
「――綺麗だ。それに固く締まっていて、バージンじゃないなんて信じられんよ」
  彼は持参したチューブ入りジェルを指に絞り出し、ハリーの後孔に塗り込みながら呟く。
「ハリー、君のお尻の中を調べさせてもらうよ」
  それに対する答えなど最初から聞く気もなく、ロベールは指を1本根元まで潜り込ませた。思わず身体を引きつらせるハリーには構わずさらにもう1本。2本の指は慣れた手付きで丁寧にそこを解していく。
「御法度は?」
「別にない。ただ、出来るだけつらくないようにしてやってくれ」
「狭いな、この子……。指は何本まで挿れた事がある?」
   3本だ、と答えるとロベールはそれでは足りないと呟いた。ロベールの陰茎はその体格に見合った大きさだ。このまま挿入すればハリーに苦痛を与える事になるだろう。拡張が必要だと言うロベールに同意すると、彼はもう一方の手の指も加えた。圧迫感が増して、それまで息を詰めて堪えていたハリーが呻く。
「痛いかい?ごめんよ、少し我慢してね」
  言葉は優しげだが手の動きは弱まらない。丁寧かつ容赦なくハリーの後孔を少しずつ広げていく。今や計4本の指に体内をかき混ぜられて、潤滑剤と体液が混ざり卑猥な水音が響き始める。そしてハリーの呻きが苦しげなものから快楽を含むものへと変わってきた。いいのか……?と耳元で囁くと、ハリーは頬を紅潮させ懸命に首を横に振って嘘をつく。だがその直後、ハリーが悲鳴を上げて仰け反った。ロベールと目が合う。彼は意地悪く笑っていた。おそらく前立腺を擦ったのだろう。快感を否定するハリーに、お前の急所はとっくに把握していていつでもイカせる事が出来るのだ、という暗黙のアピールなのだろう。
「それにしても、保護者同伴のセックスなんて初めてだな。嫌がる恋人を押さえ付けて男に犯させるなんて、君は真性のサディストだよ……。もっとも、こういうシチュエーション、僕は興奮するけどね」
  そう言うとロベールはハリーから指を抜き、立ち上がって服を脱いだ。硬い筋肉に覆われた体躯、厚い胸板。そして何より、血管を浮き上がらせ怒張したロベール自身に目が行く。余裕の笑みを浮かべていたが、その心の内では逸る気持ちを抑え込んでいたのだろう。自身から流れる先走りに濡れ光り、太く長くそそり勃つ様子は禍々しくさえ見える。一触即発な様相はロベールの興奮を代弁していた。
  ハリーが目を開けた時、その肉の凶器が彼に向かって涎を垂らしていた。凶悪そうな欲望の塊を目にし、本能的な恐怖だろう――彼の全身が小刻みに震え始める。
   ロベールは解された入口を亀頭で擦り上げながら、ハリーに優しく微笑んだ。
「少しだけ我慢してね。お尻におちんちん挿入れるからね」
  敢えて幼児言葉で優しい言い方をするが、ロベールの目的はハリーに羞恥と屈辱を与える事だ。肉体のみならず精神的にも相手を征服しようとする、この男のいつものやり方だ。
「ステファン、君もサディストらしく見届けたらいい。自分の可愛い恋人が、好きでもない男に尻を犯される瞬間も、泣かされる過程も」
  そう言うロベール自身、瞳に残忍な光を宿している。そして彼はゆっくり腰を進めた。
「――あ……や……っ!やめ……」
  消え入りそうな声で紡がれた拒絶の言葉には、この行為を阻止する力はない。
  肥大した亀頭が前進するにつれ、それに押し広げられてゆっくり肉の輪が開いていく様を見つめた。解したにもかかわらず、ハリーの入口は硬い筋肉でロベールの侵入を拒む。蕾は完全に開かされ皮膚がピンと張り詰め、軋む音が聞こえてきそうだ。
「――ッ……たァ……いっ!あ、ぁあぁ、痛い……」
  今まで痛くてもそれを口にした事のないハリーが痛みを訴える。だがロベールはそれでも侵入を続ける。傘が張り出した亀頭をねじ込みロベールの先端がハリーの中へ消えたが、躊躇ない侵入は続いた。
「よしよし……。力を抜いて――いい子だ」
  今まで私しか通った事のない道を、ロベールの巨根が徐々に開いていく。ハリーの喉から抑えきれない細い喘ぎが漏れる。   自身をほぼ埋めた後、動きを止めてロベールが呻いた。
「ステファン……。この子、いいよ……凄くいい……!」
  手を伸ばし、両の乳首を摘まみ捏ねるとハリーが身を捩らせて吐息を漏らした。
「――小鳥だなんてとんでもない。彼は……喩えるなら金色の極楽鳥だ」
   静止の間にようやく痛みが治まったのか、甘い吐息がはっきりとした呻き声になってきた。ロベールはハリーの手を取ると結合している部分へと導いた。慌てて引っ込めようとする手を強く押さえて、強制的に自分が何をされているのか指先にわからせる。
「ほら、わかる?こんなに大きく広がっちゃったよ。今、君のお尻にこんな太いモノが入っているんだ。恋人に無理やりヤラシイ格好にされてね」
  酷い恋人だよね、と言って笑いながら屈辱的な事実を囁く。顔を覗き込んでくるロベールの視線から逃れるように、ハリーは悔しそうに顔を背けた。
「もう痛くないだろう?――じゃ、いい声聞かせてもらおうか」
  言うなりロベールは腰を引いた。先端近くまで引き出した後、同じ分を再びハリーの中に押し込む。ねっとりと粘液を纏わり付かせた赤黒いペニスが、ハリーの白い尻の中を行き来する。深く穿ってはぎりぎりまで腰を引く、ひとつのストロークが長い。この小さな尻の中にどうやってこの長大なモノが納まるのだろう、と抜き差しする様子を不思議な気持ちで見つめた。甘い吐息が次第に切なげに忙しなくなっていく。首をいやいやと振って快感をやり過ごそうとしている。声を出す事を頑なに拒んでいたが、さすがに長々と前立腺を擦られては我慢出来ないだろう。
「――ハッ、ハアッ、ああ……ああぁ……ああっ!ああんッ!」
   追い詰められ、責め立てられ、いつしかハリーは大きく声を上げていた。その声と淫らな表情に、そして肛虐される光景の卑猥さに私自身も熱を帯び始める。
「可愛い声だ……容姿は極楽鳥、啼き声は小夜啼鳥(ナイチンゲール)の如く、だな……」
   ロベールは角度を変え、一点に狙いを定めて小刻みに突き上げ始めた。
  喘ぎというより叫びに近い声が尾を引く。押さえ付けられて不自由な身体がのたうつ。
「――イクよ、彼」
「ああ……」
  その途端、ハリーの身体が仰け反り、腹の上に吐精した。――足首から手を離すとハリーの身体は糸の切れた人形のようにシーツに崩れた。だが、ロベールは当然の如くそれで終わりにはしない。脱力したハリーをやすやすとうつ伏せにし、再び後ろから挿入する。
「綺麗な顔と身体、具合のいい尻、感度もいいし啼き声も可愛い。――こんな身体、いつでも好きに出来る君が本当に羨ましいよ、ステファン……」
  お世辞でもなく、誇張でもないだろう。ハリーの味を知った名うてのドンファンは、恍惚とした表情でそう口走る。そんな友人に、ハリーの秘密を教える気になった。
「もっと深くだ、ロベール……。出来るだけ奥の方を突いてやったらいい……」
  彼は私の目を見つめ、無言でにやりと笑うとハリーの上体を引き起こした。挿入されたまま座らされる事を拒んで、咄嗟にハリーは脚に力を入れ体重を逃そうとする。だが、ロベールは後ろから両脚を抱え上げ、そのまま自分の陰茎の上に彼の尻を下ろした。
「あああぁぁ――――っ!」
   全体重が結合した部分にかかり、あまりの深い挿入にハリーが絶叫する。さらに下から突き上げると、射精したばかりにもかかわらず、また精液を宙に散らした。
「――く……っ!凄い締め付けだ……ステファン、中に出してもいいかい!?」
「ああ、構わない」
  そう答えた途端、ハリーが猛然と暴れ出した。
「嫌だ!嫌だ――っ!やめて!ステファン!ステファン!」
  ハリーが私を呼びながら精一杯両手を差し出してくる。裏切り者の叔父に、それでも彼は私を求める。――思わず彼の上体を抱き締めた。
「ステファンじゃないと嫌だ!ステファンのじゃないと嫌だぁ!」
  ハリーのこの剥き出しの想いに、どうしょうもなく胸が切なくなる。彼の頭を胸にかき抱きながら、それでも私は友人に言った。
「ロベール、構わん……」
  激しい突き上げが再開される。ひと際強く腰を打ち付けてロベールは動きを止めた。そして一瞬の沈黙の後――。
「……わあああぁぁ!」
  身体の中に流れ込んでくる精液を感じたのだろう。ハリーは私の胸の中で泣き崩れた。だが、ロベールは中で放った後もまた抜き差しを始める。
「一度じゃ済まないな。泣く男を犯すのは興奮するよ!――病みつきになりそうだ」
  私は、幼い子供のように泣きじゃくるハリーを抱き締めたまま、慰めに彼のペニスを扱き始める。二人がかりで性器と後孔を前後から同時に嬲られ、ハリーは完全に理性を飛ばした。狂ったように泣き叫ぶ姿に煽られて、ロベールが彼の中で二度目の吐精を果たす。
  再びシーツに突っ伏したハリーの腰を、ロベールはまだ放さない。最後の一滴まで彼の中に注ごうと絞り出している間、ハリーがのろのろと顔を上げ私を見上げて言った。
「これがあなたの望みなの?ステファン……」